科学的研究と歩行機能
セラピースペース ながしま
歩行って、よくわかっていないんですね。
多くの人は、余り歩行のことを考えながら歩く事は無いと思います。
歩行は移動のひとつの形態ではありますが、それだけではないのです。
歩行の基本的なところとしては、身体構造とともに、二足直立位でのバランス〜前庭感覚と身体図式、網様体脊髄路の反応などなどが成立している前提が必用です。
その上で、歩行誘発野(MLR、SLR、CLR)などが興奮して、脊髄のCPG というメカニズムと協調し、歩行運動が出力されていきます。
CPGとは脊髄で歩行パターンを出力するメカニズムで、広いところで一定のリズムで歩く様な場面では、脳は歩行に関わる多くの処理をCPGに依存し、そうすることで、脳は他の情報処理〜たとえば他のことを考えたりしながら歩行をするというマルチタスクを行うことが可能になっています。ちなみに、一歩目を踏み出す際の脳活動と、それ以降の脳活動ではCPGへの依存度が変化していますので、脳活同事態も異なります。
脳損傷の方は、歩行自体を無意識下に落とし込むことが困難ですので、歩行中に他のことをするのが苦手な人が多いです。
話しかけたら、一旦止まって話されることになることが多いですし、振り返る時も歩きながら振り返ることができる方は少ないのです。
さらに、移動手段としての歩行としては、階段や傾斜を登る/下るとか、水の中を歩くとか、強い風の中を風邪に向かって進む、強い追い風の中スピードを制御しながら歩く、段差を乗り越えるとかいったことも起きますよね。
段差を乗り越える際には、視覚認知による段差の高さの知覚と身体図式によって先行する下肢をどの程度持ち上げるかといった制御が必要となります。その挙げたパターンで同じ程度後ろ足を挙げて歩くのですが、ここには身体図式がとっても重要な動きになります。さらに、またいで一旦止まってしまう様な場合においては、それらの身体情報と障害物の情報などの条件、情報を一時的に保持しておく必要がありますので、ワーキングメモリーの関与も不可欠です。
他にも、自己表現としての歩行という要素もあったりします。
現在リハビリテーションの効果判定として研究されている歩行というのは、そういった多彩な歩行の要素の中の一部〜例えば筋力であるとか歩行スピードであるとかそういった要素を抜き取って、「仮に」歩行の機能とし、一定の技術がその一部の要素で改善したか否かなどを判断し、論文にしていくわけですね。
そこで、Aという手法とBという手法になにかしらの差がでなかったとしましょう。それは、歩行という機能について、AとBに差が無かったことを示しているのでは無くて、歩行の研究のために抽出した筋力とかスピードとか言った要素においては、AとBは差が出なかったということで、全体的な歩行という機能に関して言えばAとBは差があるとも無いとも言えないという言い方になります。
また、差が生じた場合も同じような解釈ですね。あくまでそのようその中のことであって、歩行自体に与える影響としては差があるとも無いとも言えないというのが科学的なものの見方ということになるはずなのです。
それを、効果があったとか無かったとか表現する人も多いですが、それは自分が言いたいことを補完するために研究情報を利用しているということになります。それは科学を都合の良い様に意図的に解釈して居るということになりますので、「科学」に対する冒涜だと思うのですね。
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