Cute Movies
さらば、愛しのブルーアイズ!
2008年9月26日。
世界で最も愛された映画俳優ポール・ニューマンが逝った。
走馬燈のようにニューマンがこれまで出演してきた様々な名作が瞼を過ぎる。極貧から抜け出し世界チャンピオンになる実在のボクサー、ロッキー・グラシアノを演じた「傷だらけの栄光」、(この作品があってこそかの名作「ロッキー」が誕生したのだ!)イスラエル建国を描く社会派ドラマ「栄光への脱出」、苦悩する青年の焦燥を描いた「ハッド」、孤独なビリヤードプレイヤーを見事に演じきりオスカー候補となった「ハスラー」、強烈なアウトローを演じた「暴力脱獄」、アカデミー作品賞に輝いた「スティング」等々。
どんなジャンルの作品でも圧倒的な存在感を漂わせ、いつもヤンチャな仕草とその澄んだ青い瞳で我々を魅了し続けてくれたポール・ニューマン。なかでも映画ファンから愛され続けている作品が「明日に向かって撃て!」だろう。原題は「BUTCH CASSIDY AND THE SUNDANCE KID」ニューマンは憎めない悪党ブッチ・キャシディを演じ、それまで無名に近かったただの2枚目ロバート・レッドフォードはクールなガンマン、サンダンス・キッドを好演し本作で一躍トップスターとなる。そしてヒロインには「卒業」の奪われる花嫁役が有名な青春のマドンナ、キャサリン・ロスが花を添える。コンラッド・ホールの流麗なカメラワーク(撮影当時キャサリン・ロスと恋人同士だったのだ!彼女がとにかく綺麗なのは頷けるね!)、全編に散りばめられたバート・バカラックの洒落たメロディ、特に名曲「雨に濡れても」は美しい!他にもスキャットが印象的な「サウスアメリカンゲッタウェイ」もバカラックの才気が漲る。そしてセンス溢れるジョージ・ロイ・ヒルの演出!最高のスタッフ、キャストが産み出した映画界の至宝だ!製作後40年近く経った作品だが色褪せることはない。ポール・ニューマンは永遠だ!
ニューマンが亡くなった日。
「NEWYORK TIMES」
「LA TIMES」「USA TODAY」「WASHINGTON POST」
経済誌の「WALL STREET JOURNAL」
三大ネットワーク、CNNそしてBBCも米英のメディアはいずれもトップでこのスターの訃報を伝えた。この俳優がいかに多くの人々に愛されたかを物語っている。偉大な俳優、伝説の俳優は数多いるが、映画の歴史の中でもこれほど多くの人々に愛されて逝った俳優は恐らく「素晴らしき哉!人生」「グレン・ミラー物語」のジェームス・スチュアートとポール・ニューマンが双璧だろう。ただの不良がボクサーになり天下を取る「傷だらけの栄光」のラストシーンではオープンカーで優勝パレードをするニューマン演じるロッキーが「俺のことを誰か上の方で好いていてくれてんだ!」と天に向かって微笑むシーンがある。この映画の原題が「SOMEBODY UP THERE LIKES ME」そうきっとポール・ニューマンのことを神様も大好きだったんだね!
「暴力脱獄」の原題は「COOLHAND LUKE」(冷たい手のルーク)。ニューマンはアウトローのルークを演じ、多くのファンを掴んだ名作だ。アメリカの新聞はこれをもじって彼の訃報の際「COOLHAND WARM HEART」とヘッドラインにしるした。
中学生の時、はじめて洋画を見た。「明日に向かって撃て!」だった。
上映中に4回映画館に通いブッチとサンダンスに幾度も会いに行った。B・J・トーマスの歌う主題歌「雨にぬれても」のレコードがすり減り、同じシングルを2枚買った。なんだか映画が好きになり、いや大好きになり、ポール・ニューマンの虜になった……。
さらば愛しのブルー・アイズ!
text by... 茶柱達蔵