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Cute Movies

人のセックスを笑うな

監督:井口 奈己

(C)2008「人のセックスを笑うな」製作委員会
(C)2008「人のセックスを笑うな」製作委員会
(C)2008「人のセックスを笑うな」製作委員会
甘くて、切なくて、恥ずかしい… 恋する気持ちがぎゅっとつまった青春恋愛映画

タイトルを最初に見たとき、まずは「んん?」と考え込んでしまった。はたしてどんな内容か、非常に気になるタイトルである。
原作は、山崎ナオコーラさんの同名作で、2004年の文藝賞を受賞。第132回芥川賞の候補作にもなり、「思わず嫉妬したくなる程の才能」と絶賛された。
映画版には、『Don't laugh at my romance.』という副題がつく。つまり、セックス=romance(恋愛)という意味。
ストレートなタイトルに色々な想像が頭をめぐるが、実際は胸が締め付けられるような切ない恋愛映画だ。

19歳の美大生みるめ(松山ケンイチ)は、20歳年上の非常勤講師ユリ(永作博美)に恋をする。自由奔放なユリに振り回されながらも、みるめは初めての恋に夢中になっていく。
そんなみるめに想いを寄せる同級生のえんちゃん(蒼井優)と、えんちゃんに想いを寄せる堂本(忍成修吾)。やがて、ユリに夫がいることを知り、もう会わないと決意するみるめだったが…。

それぞれの切ない想いが交差しながら、物語はゆったりと進む。
どこにでもある平凡な風景に、心と体がどんどん開放されていくのを感じた。
時々その風景に重なるように流れる、シンプルでかわいい音楽がとても心地いい。

「この映画に関しては、ほとんど芝居をしてません」とコメントしていた松山ケンイチ。役者に自然な演技をどこまでも要求し、リアルさにこだわる井口奈己監督の撮影手法によって、見てる者が思わず赤面するほど、リアルで生々しい恋愛風景が表現されている。
役者たちの限りなく素に近い演技は、ドキュメンタリーを見てるかのような錯覚におちいり、それがまた、妙に気恥ずかしいのだ。
特に、永作博美と松山ケンイチの二人のシーンは必見! ものすごく甘いんだけれど、作りこまれていないナチュラルなラブシーンは、強烈な印象が残る。
監督が女性ということもあり、細かいところにキュンとくるツボがたくさんあって、何度もニヤッと笑ってしまった。

恋愛中の人も、そうでない人も、やっぱり「恋愛っていいなあ」と思わずにはいられない作品だ。
恋に溺れるみるめの気持ちや行動は、女性に限らず、男性にも共感を呼ぶことだろう。

恋愛は自由だ。いくつになっても。たとえいくつ年が離れていようとも。
好きになる気持ちは誰も止めることができない。

「だって触ってみたかったんだもん」

劇中で、ユリが言い放つセリフ。
わがままで、自分勝手なユリだが、どこか憎めなくて、ちょっと憧れる。もちろん現実はもっと複雑で、そんなに甘いもんじゃない。
でも、せめて恋愛してる時くらいは、フワフワとした温もりに包まれていたい。二人だけの甘く濃密な時間に潜り込んでいたい。

この映画には、そんな二人の恋愛が、日常から切り取られてリアルに存在している。


text by...  岡原文恵

2008/01/17