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Cute Movies

ツイン フォールズ アイダホ

監督:マイケル・ポーリッシュ

シーンとした静かな夜には、妙に頭がすっきりして、
なんだか自分の感覚が研ぎ澄まされたような気分になることがある。
そんな夜のせいなのか、
かすかに雨の降る静かな夜更けに観たこの映画は、
頭が妙にすっきりした時ように、わたしの気持ちをしーんと静かにさせた。
そして、その静けさの中にじーんとかすかな鈍痛。
痛みというのとはちょっと違うのかもしれない。
でも、とにかく映画を観終わった時の私の感覚はそんな印象だった。

よく誤って肘かなんかを机の角に打った時、かなり激しい痛みの後、
時間が経っても、骨の奥の方にじーんと静かに響くような痛みが残る。

そんな例もどうかと思うが、
その時のじーんという感覚。あんな感じだ。


マーク・ポーリッシュとマイケル・ポーリッシュ。
双子の兄弟が、脚本・監督・主演で製作した1組の双子の物語。
一卵性双生児でもあるポーリッシュ兄弟が映画の中で描いた双子には、本人達と決定的に大きな違いがある。
それは、彼らが描いた双子がシャム双生児、結合性双生児であるということである。

生れつき、体の一部がつながって生まれてきた双子の青年ブレイクとフランシス。
彼らと知り合った一人の若い娼婦ペニーは、
最初は彼らに驚き逃げたものの、病気のフランシスを看病するのをきっかけに彼らと親しくなる。
そして、双子の片割れブレイクに惹かれ始める。

結合性双生児の二人を描いたこの作品は、
ある意味特殊で過酷な境遇の物語にもかかわらず、
決して壮絶で激しい物語にはなっていない。
つながっている二人の体は、決して素早くは動かない。
二人でタイミングを合わせて静かにゆっくりと動く。
まるで、その二人の動きのように、この映画自身もまた静かで優しく繊細だ。

双子の二人と彼らに惹かれた一人の娼婦。
彼ら3人が抱える苦悩や葛藤、悲しみ、そっと寄り添う思い。
それらは確かに深く、時に激しい。
しかし、自分たちの強い感情が外にこぼれ出てしまうことをまるで恐れているかのように、
その思いが感情的に強く表現されることはほとんどない。

静かにゆっくりと流れていく時間と、静かに揺れ動く感情。
その度に、冷ややかで温度がないように感じていた全体の空気がそっと温度を持つ。
悲しいが決して絶望的ではない。
独特の空気感がこの映画にはある。


静かで繊細な独特の空気感と共に、時々発せられる印象的なセリフも魅力的だった。
取り出すことで壊れてしまう言葉たちを、ここに書いてしまうことは諦めた。
ぜひこの映画を見て、その魅力を味わって欲しい。
脚本・監督・主演と多彩な双子兄弟が次はどんな映画を撮るのか楽しみである。

text by...  RS

2001/03/30