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Cute Movies

オーバー・フェンス

純粋で不器用な者たちの、愛しくも狂おしい青春

2016年9月17日(土)、テアトル新宿ほか全国ロードショー<br>(C)2016「オーバー・フェンス」製作委員会
2016年9月17日(土)、テアトル新宿ほか全国ロードショー
(C)2016「オーバー・フェンス」製作委員会
オーバー・フェンス

監督:山下敦弘 
脚本:高田 亮  
出演:オダギリ ジョー、蒼井 優、松田翔太 /優香、北村有起哉/満島真之介
配給:東京テアトル+函館シネマアイリス(北海道地区)

ストーリー

家庭をかえりみなかった男・白岩は、妻に見限られ、東京から故郷の函館に戻りつつも
実家には顔を出さず、職業訓練校に通いながら失業保険で暮らしていた。
訓練校とアパートの往復、2本の缶ビールとコンビニ弁当の惰性の日々。
白岩は、なんの楽しみもなく、ただ働いて死ぬだけ、そう思っていた。
そんなある日、同じ職業訓練校に通う仲間の代島にキャバクラへ連れて行かれ、
鳥の動きを真似る風変りな若いホステスと出会う―。
名前は聡(さとし)。
「名前で苦労したけど親のこと悪く言わないで、頭悪いだけだから」そんな風に話す、
どこか危うさを持つ美しい聡に、白岩は急速に強く惹かれていく…

記者の見どころ

孤高の作家・佐藤泰志による函館三部作の三作目となる本作『オーバー・フェンス』。他の三部作作品『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』とは違い、最後に、ほんの少しの、生きる希望が見えてくる作品だ。

オダギリジョー、松田翔太と今や邦画界きっての演技派俳優の地位を確立した俳優陣が共演し、函館三部作の完結編を作り上げた。社会の底で光を求める男たちを丁寧に演出し、特にオダギリジョーの渋みと弱さを兼ね備えた演技には魅きこまれた。その中で蒼井優が刺激的だれども脆弱な女を演じることで、彼らの人生の暗さを際立たせる。そんな俳優陣が化学反応を起こし、作品の登場人物は年代的には中年にさしかかる人ばかりなのに、青春映画のようなもどかしさが漂う。

星野秀樹プロデューサーが「監督が職業訓練校に通っていたときの憧れの世界だったのではないか」と解釈するように、作品終盤では荒廃した感情の中に少しの明かりが指す。訓練校のメンバーも癖が強いけれどどこか芯のある面々で、特に鈴木常吉演じる勝間田の包容力には少しの憧れを抱いてしまった。

これまでの二作が鬱屈とした作品だったからこそ、ラストシーンがより鮮やかに見える。辛い過去から逃げ、行き先も見えない男と女。フェンス(=人の作った障害物)の向こう側に見えた景色とは。

Text by EISUKE